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槍の神殿

　暗黒神ダスタムの教団総本山。帝都シリアム=ティトセラとは目と鼻の先、アウザ湖のほとりに建設されている。帝国建国前から、この地をダスタム信者たちは拠点としており、帝国も形式上 彼らから土地を預かっている扱いとなっている。そのルーツは魔道大戦当時のリェントラー人であることは、言うまでも無い。

　ダスタム教団とは帝国と比肩する戦闘集団でもある。その総本山である"槍の神殿"も神々しい場所というよりは、一種の軍事拠点に近い。"御神の槍"が安置され、皇帝の帝位継承の儀式が行われる聖堂だけは壮麗で立派な建造物となっており、これを取り囲むように神官たちが生活をする場や、信者たちが修練を積むための訓練場、修業に来た信者たちを受け入れる宿泊施設などが併設されている。
　正確を期すなら、元々 この地は訓練場を中心とする修練の場であった。そこに帝都建設とともに、"御神の槍"を安置する聖堂があとから建設されたというのが経緯である。聖堂が建設されるまで、ここは単純に "道場"と呼び習わされていた。今でこそ "槍の神殿"というのが正式な名称として知られているが、信者たちの間では "道場"という呼び方が充分に通用する。

ダスタム教団

　ダスタムの二つ名は暗黒神だが、決して人々に害をなす存在ではない。あくまで光明神を名乗るラノスとの対比に過ぎない。ダスタムもまたリアスターグを支え守る神々の一人である。教典は "黒翼翔" と呼ばれる。漆黒の槍が教団のシンボルとなっている(無論、これは"御神の槍"を模したものである)。
　ダスタムに祈りをささげる時は、片手を下に下ろし、もう片方の手を握って胸の前に置き、上を仰ぐのが基本の姿勢となる(略式では片手を握って胸に置くのみ)。

　ダスタムは軍神であり、魔族との戦いにおいて、最先鋒を務めることを自任している。軍神であるという側面のほか、ダスタムは罪人に裁きを与える神でもある。ダスタムの上級神官でもある "処刑人"は まさに断罪者であり、自身の判断で罪人を処刑する権利を世界的に認められている。
　"処刑人"に殺された者の魂は、死者を送る葬送の儀式なしで冥界へ送られるため、戦場で(慈悲を込めた)止めを刺す役割も任じられている。その意味でもダスタムは戦神として崇められている。

　ダスタムの信者に課せられる戒律は、他の至高三神と比較して かなり緩い。ラノス信者に言わせれば「戒律など無い」というほど、信者の自由意志が尊重されている。このため、ダスタム信者はみな個性的で、その生き方も多様である。
　だが、ただ自由なだけではない。「自分の行動に対して責任を必ず取る」ということが、ダスタム信者に課せられた ほぼ唯一の戒律だからだ。だから、他に道が無いとあれば国家の法を破ることもある彼らだが、法を破ったことに対する報いを受ける覚悟もまた出来ているのである。その責任の取り方は様々だが、この覚悟を知っているため、ダスタム信者の行動は多くの場合信用される。

　神に仕えることを全てとして教団に属する者たちは "黒神官"と呼ばれる。無論、彼らも戦闘訓練を専門に受けており、何らかの武器の扱いに長けている。信者たちに武器の基本的な使い方を教える役割でもある。
　さらに上位の神官は "黒き闘翼"と呼ばれている。彼らは緊急時には "御神の槍"を使うことすら許されており、ダスタムの力をよりいっそう強力に振るうことが出来る。戦いにおいては信者たちの集団を率いる部隊長となる。
　また前述した "処刑人"もやはり高位の神官である。彼らはより戦いの道に専心することが求められており、魔族との戦いを渇望している。やはり "御神の槍"を使用する権利が認められている。彼らは隠密の技にも優れており、その姿はなかなか人目に触れない。
　教団の最高責任者は "黒翼戦士長"と呼ばれる。その名の通り、優れた戦闘指揮官であり、"御神の槍"を使う権利を、帝国皇帝と同位で持っている。皇帝継承の儀式を執り行う役目でもある。

　ダスタム教団の神殿といえるような建造物は、"槍の神殿"以外には存在しない。各地で信者たちは集まり、共に戦技を磨いているが、そのために特定の施設は必要ない、というのが彼らの考え方として一貫している。つまり、信者の集まるところが すなわち神殿なのだ。
　ただ、一生に一度は "槍の神殿"に巡礼に行き、そこで修行をすることが推奨されている。この巡礼は強制ではないが、武芸を極める意味でも行く価値はあるため、殆どの信者が "槍の神殿"に一度は向かうという。

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