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• 母なる神の揺り籠

母なる神の揺り籠

　世界的な規模の吟遊詩人ギルド。本部がフィンに置かれている。吟遊詩人たちが歌い奏でる楽曲や、神話伝承などを体系づけて整理し、所属する吟遊詩人たちに教えたりしている。また、旅先での彼らの生活をサポートする役割も果たしている。
　このギルドは吟遊詩人だけでなく、そんな彼らをサポートしたいと思っている一般の人々も加入できる。こうした人々はギルド内では"詩人の友"と呼ばれている。"詩人の友"は、訪れた吟遊詩人たちをもてなし、宿や食事を提供することで彼らを助け、その礼として音楽などを提供してもらう、という関係にある。リアスターグ各地の宿屋や酒場が、"詩人の友"として このギルドに加入し、吟遊詩人たちが本来の仕事をする場の提供もしている。
　吟遊詩人は、単に音楽で場を盛り上げるだけでなく、各地で起こったニュースを伝えるという役割をも持っていたため、どこでも歓迎されることが多いが、そんな彼らが世界中を旅しても、あまり不自由を感じないのは、各地に "詩人の友"がいる、ということに依るところが大きい。

　このギルドに加入している吟遊詩人は、金と銀で作られた二重鎖のペンダントを持っている。ペンダントには自分の名前が刻まれている。首にかけるだけでなく、自分が愛用する楽器に結わえたりするなどして、すぐに見えるようにすることが多い。そうすれば、"詩人の友"が助けを差し伸べやすいからである。この証は"金銀の鎖"という呼び名で人々にも知られており、吟遊詩人を表す代表的な言葉となっている。
　一方で、"詩人の友"には、鮮やかな青と緑の格子模様の旗が配られる。これを戸口に掲げれば、自分が"詩人の友"であり、吟遊詩人たちをいつでも歓迎する、という意思表示になるのである。この旗を掲げているときに、"金銀の鎖"を持った吟遊詩人が訪れた場合、可能な限りの支援をしなければならない(無論、そのような余裕が無いときは無理に旗を掲げる必要はない)。

　ところで、このギルドには もう一つ、表立っては知られていない役目がある。それは 呪歌謡い の保護と教育である。呪歌とは魔法的な効果を持った歌や音楽のことであり、リアスターグでは時として、自分の歌声や 楽器で奏でる旋律が そうした呪歌となる力を持った人が生まれる。その効果は限定的なものではあるが、基本的にその音楽を聴いたものすべてが影響を受けるため、何も知らないまま 力を振るうのは危険でもある。
　そこで、"金銀の鎖"を持った吟遊詩人たちは、各地を旅して こうした呪歌の力を持っている人々を見つけ出し、その力について教えると共に、制御の仕方などを学ばせるために、フィンにある本部へと連れて行くのである。
　無論、殆どの吟遊詩人たちは呪歌の力を持ってはいない。時には、相手の呪歌の力が強力すぎて、手に負えなくなることもある。その時は そうした呪歌に対抗できるだけの実力を持つ呪歌謡い(もちろんギルドに加入して訓練を受けている)の派遣をギルドに要請する。
　"吟遊詩人"と"呪歌謡い"は、はっきりと区別される異なる立場ではあるのだが、音楽を愛するという意味では、どちらにも違いは無い。このため、ギルドでも その二つの違いによる扱いの区別はしておらず、呪歌の力の有無によって与えられる"金銀の鎖"が変わったりするようなことは無い。
　このギルドに加入する限り、呪歌謡いであっても、吟遊詩人として働けるように訓練されるのだ。自分の子供が不可思議な力を持っていて対応に困っていたときに、このギルドの助力を受け、それに感謝して "詩人の友"となりギルドを支援することを決めた、という人も 実はかなり多い。

　ちなみにギルド名の"母なる神"とは慈母神ティナリアのことである。自然の守護者であるティナリアは、同時に芸術や芸能の才を祝福する女神でもある。ティナリアは、特に音楽の才能を持つ者を祝福するといわれており、美しい歌や演奏の才能・・それに呪歌の力も、全て女神の祝福によって与えられた、とされる。これにちなんで、このギルド名が付けられた。

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