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アクワイワ(スパイク)によるチャンバラアクションが特徴のゲーム。幕末の侍の悲しさを描く。

侍

• 侍
  • 刀を抜く、ということ
  • 力を失う侍たち・・

　寂れた宿場町に流れ着いた浪人(主人公)が、そこで繰り広げられる利権争いに巻き込まれ、どのようにそれに関わっていくかを描いています。全編を通して落ちぶれていく武士という歴史の流れの悲哀を描いたタイトルで、独特の物寂しい雰囲気が印象に残る一作となっています。
　ゲームはフィールドを自由に動き回りながら、特定の時期や場所によって起きるイベントを見ながら、ストーリーを進めていく形となっています。イベントの要所要所で行動の選択が出来る部分があり、それに応じてストーリーは幾つかに分岐し、幾つかのエンディングを迎えることになります。
　基本的にはゲーム中に登場する幾つかの勢力の、どれに味方をするか？ ということにはなりますが、争う勢力を仲直りさせるのが、一番ベストのエンディングということになりそうです。

刀を抜く、ということ

　このゲームの主人公は浪人といえど "侍" です。その武器はもちろん刀なわけですが、その操作には一つ特徴があります。それは「刀を抜く/収める」というボタンが独自にある、ということです。
　これが何を意味するのかというと、刀を抜く＝攻撃の意志あり＝敵対行為と相手に見なされ、台詞などの選択などをせずとも、相手を戦うつもりであることを示すことになるのです。だから、間違ってボタンを押してしまったりすると大変なことになります。
　またバトルの連続ともなると、刀を抜いて走る・・ということにもなるでしょうけど、「自分の意志で刀を抜いている(＝戦っている)」という感覚が、実に小気味良い臨場感を与えます。
　そんなわけで「刀の抜き差し」は、武士らしいアクションを起こす一環として、実に良い味を出しているといえるでしょう。

　戦闘シーンはテレビの時代劇のようなチャンバラアクションとなっています。面白いのは「どんなに沢山の敵が出現しているとしても、自分に攻撃をしてくるのは必ず一人だけ」という縛りがあることです。主人公を引き立てるため、時代劇のチャンバラシーンってそんな風になってますよね。だから、取り囲まれたからといっても、慌てなくてOKです。・・というか、一番怖いのは強大な敵との一騎打ちですからねえ。

　刀には単純な攻撃力以外に強度なども設定されています。あんまり防御のために使いすぎると、強度が下がって折れてしまう結果になるので、いかにうまく立ち回るのかは非常に大事な要素となります。ゲーム中で刀の能力を鍛えることも可能になっています。
　戦闘シーンでは、戦う相手も皆 刀(稀にそれ以外の武器もあり)を持っています。そして敵を倒せば、その武器は地面に残り自由に拾えます。雑魚が使っている刀でも、中には強力なものが隠れていたりするので侮れませんし、メインキャラクターが持つ物ともなれば、名品といえるもの揃いです。特定の勢力に肩入れすれば、それ以外の勢力とは最終的に戦う結果になることが多いので、色々なエンディングを見ていく過程で、レアな武器をどんどん集めていく楽しみがあります。
　ゲームをクリアしても、そのとき所持していた武器は引き継がれます。そして、新たにゲームを始めるときに、好きな刀を持ち出せるようになります。ゲーム中では刀の強化も可能ですから、何度もプレイすることで 自分の愛刀をどんどん鍛えることも可能なわけです。ただし・・もしゲームオーバーになると、そのとき持ち出した刀も一緒に失われますので注意は必要です。

力を失う侍たち・・

　このゲーム、一回のプレイ時間はそれほど長くありません。適度なボリュームといってよいです。だから、全部のエンディングを見るまで頑張るぐらいでちょうどいい感覚です。また、各エンディングへの過程は、かなりダイナミックに差がありますから、一通り見たくなるはずです。
　中にはしょうも無いエンディングがあることを否定はしませんが、その殆どは明治維新を迎えて、どんどん力を奪われていった侍の悲哀を描いている点が、えもいわれぬ無情感とともにプレイした人の心に残るような気がします。

　どんなにこのゲームで主人公たちを活躍させたとしても、やがては帯刀を禁じられ、自らの名誉を貶めてしまいかねない未来が待っていることに変わりは無い・・それでも彼らが輝いていた時代が確かにあった・・そんなことをつい考えてしまう、そんな切ない名作となっています(映画「ラストサムライ」が、そんな感じでしたねえ)。

　好評を博したこともあってか、この後 同じシステムコンセプトでシリーズ作が幾つか出ています。ただ、このなんとも言われぬ切なさみたいなものは、この初代作が一番ではないかなあ、と思ったりもします。
　なお、このタイトル 後になって「完全版」というのが出ています。実は元々かなりひどいバグがあることが知られており、それをフィックスするとともに、海岸版で追加されていた要素が取り込まれているとのことです。今プレイするなら、こちらの方が良いでしょうね。