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• 精霊守ジェスリダ

精霊守ジェスリダ

　大地の精霊と盟約を結びその力を行使する精霊剣士の一族。古くから現在の場所に里を構えており、大地と共に生きることを身上としている。彼らは滅多に外に出ることは無い。里で農作物を育て、いくばくかの家畜と共に静かに暮らすことを望んでいるからだが、これは西方における彼らの立場が非常に微妙であることに起因している。

　古い記録を見ると、"生ける盾"に味方をして共に戦っていたことが分かっている。こうした経緯を裏付けるように、分裂前のゼール王国(というよりも初代のゼール王)とは親交が深く、王国設立後もゼール王に力を貸すことがあった。しかし、王の没後、王国が分裂してからは、どちらか一方に付くことは選ばず、距離を置いて中立の立場を取るようになった。
　それが崩れたのは450年のことだった。当時の里の長老が それまでの慣例を破り、高額な報酬を受け取ってゼール王国の傭兵となって戦いに参加したのである。これにより、西方の人々がジェスリダを見る目は大きく変わる結果を生んでしまった。全てを焼き尽くす炎が、正統ゼール王国軍の兵士たちに与えた恐怖は相当なもので、正統ゼール王国軍は敗走を繰り返した。しかし、慣例を破った元長老を止めるべく、里に残っていた者が正統ゼール王国側に組することで、戦況は大きく動いた。
　大地の精霊剣士たちが互いの技を激突させたことにより、この戦いは かつてないほど凄惨な消耗戦に突入した。この戦いは "焔(ほむら)の戦い"として人々に記憶され、双方を焼き尽くそうとした炎の勢いは、恐怖と共に語られるようになったのだ。この戦いでゲーゼビット周辺は焼け野原と化し、ゲーゼ布の価格が高騰し、西方の経済は混乱した。
　452年、元長老が討ち取られ、それに賛同してゼール王国側についた里の者が全員命を落としたことにより、戦いはようやく終結したが、勝利したはずの正統ゼール王国側にも歓喜の声は無かったという。

　この戦いの後、ジェスリダの人々は西方で忌避されるようになり、滅多なことでは里から出られなくなった。無論、ジェスリダは自分たちの力が、こうした結果を生みかねないと分かっていたので、王国間の戦いに関与してこなかったのだが、それを言ってももう遅く、ただ人の目を避けるように里で静かに暮らすしかなくなったのである。
　西方では、こうしたことから精霊剣士に対する拒否反応が、他に例を見ないほど強い(大空や大海の精霊剣士であっても、それを公言しない方が良い)。それでもジェスリダが里を他の地域に移さないのは、そこが彼らの生まれ育った場所であること以外にも、何か理由があるのかもしれない。

　余談になるが、"焔の戦い"で焼け野原と化したゲーゼの畑は、翌年以降 新たな種まきによって復旧していったが、その生育はそれまでより遥かに良好だった。それは、灰と化した植物が畑に良い影響を及ぼしたからであり、大地の精霊の力は「炎」だけではないことの証明でもある。しかし、そのことが人々に認められるようになるまで、さらに50年ほどの年月が必要とされた。

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